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靖 伊藤

AHPコンピテンシーコラム第111話

販売店ではお客様に対する”声掛け”が重要視されています。新入社員教育や販売員教育においても、お店にいらしたお客様に声をかける事が重要視されています。ただ、”声掛け”と“声出し”との違いを理解していない人をよく見かけます。先日も大阪地下街を歩いていると、販売員がお客様を呼び込む為に大きな声を上げているのを見かけました。厳密に言うと、聞こえたというべきでしょう。「どんな店かな?」と思って声のする方を見ると、その販売員の人はお客様の方ではなく、店の内側を向いて商品の整理をしながら”声出し“をしていたのです。確かに、この販売員さんは声を出すことによって、道を歩いている人を店の方に注意を惹きつける事は出来ていたと言えるかもしれませが、残念ながら、その店に立ち寄って商品を見ようという気持ちにさせることができたというわけでないようです。また、他のあるお店でやはり”声出し“をしていた販売員の人がいました。この人もやはり作業をしながら、"声出し”をしていたので、お客様がどのような表情でどんな事を考えていたかを知る事は出来ず、入ってきたお客様は急に声を出されてびっくりしたようで、すぐに出ていってしまいました。

この“声掛け”は「対人影響力」のコンピテンシーに関係するものです。「対人影響力」とは、「社内外の関係者に対して、あらゆる説明の方法やツールを駆使しながら、こちらの考えている通りに相手が納得し、動いてもらうように影響を与えていく能力」です。販売員さんたちに当て嵌めると、振り向いてもらうだけでなく、中に入ってもらい、商品を気にいってもらい、買ってもらうというところまで持っていく能力です。その為には、先ずは声をかける際には、お客様の方を向いて、その人が今どのような気持ちなのかを観察することが大切です。ここにもう一つのコンピテンシー「対人理解力」が必要になります。「対人理解力」とは「単に言葉や態度で伝えられたものだけでなく、言外にある意味も含めて、相手の気持ちや考えを、自分の考えや感情で歪めることなく、その通りに正確に理解していく能力」です。ここで重要なのは、相手が口に出しているバーバル(言語的)コミュニケーションだけでなく、声に出していないノンバーバル(非言語的)コミュニケーションをどのくらい理解できているかということになります。色々なお店で店員さんを観察していると、感じが良く、「買おうかな」と思う店員さんはきちんとした話をする、つまり、「対人影響力」を発揮しているだけでなく、こちらの話もきちんと聴きながら、言葉に表せていないボディランゲージをも理解し、そこに見え隠れするお客様の真の要望に対応できている人が多いのではないでしょうか?

 

 

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