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靖 伊藤

AHPコンピテンシーコラム第113話

今回は、コンピテンシーの2つの分類についてお話したいと思います。仕事をしていく中で、ポジションが上がってくると、避けて通れないのがマネジメントです。マネジメントは業務の側面と人の側面があります。業務の側面では、業績を向上させる為の戦略を形成したり、専門性を発揮したりするのに対し、人の側面では、組織の活力を発揮させたり、ネットワークを形成したりします。この2つの側面のバランスを取る事が成果を挙げる為に重要になります。

コンピテンシーは「成果を挙げる為に行動として発揮された能力」ですので、マネジメントを行う為には、2種類のコンピテンシーが必要になります。一つが業務コンピテンシーであり、もう一つが対人コンピテンシーです。例えば、業績を向上させる為には、自らのビジョンを描いた上で、自社の内外の環境でビジネスに影響を与えるであろう事象を抜け洩れなく把握・分析する事が必要になります。ビジョンを描く為には、「概念的思考能力」が必要であり、状況把握には「情報収集能力」、分析する為には「分析的思考能力」が必要になりますが、これらが業務コンピテンシーです。また、顧客に関する情報収集においては「顧客志向性」が必要になりますが、これは対人コンピテンシーです。次に、これらの業務コンピテンシーを駆使して作成された戦略を実行している為には、戦略の指し示すところを、ステークホルダーにきちんと伝達し、動機付ける事が必要になります。この為には、様々なステークホルダーが考えている事を正確に理解する為の「対人理解能力」と相手をその気にさせる「対人影響能力」が必要になります。

これらの2種類のコンピテンシーはどちらかがあればよいというものではなく、双方が揃って始めて成果を挙げる事ができますので、リーダー人材の育成においては、どちらか一方に偏るのではなく、双方のコンピテンシーの育成を行う必要があると言っても過言ではありません。

以前、友人が「うちの社長は最近、事業計画を上手く書く奴を重宝している為、社内のモチベーションが下がっている」とぼやいていました。よく話を聴いてみると、その人たちが書いた事業計画書は、理論に忠実に書かれているものの、現場の真の状況を把握しておらず、実行の際に発生する問題に対する対策等は殆ど含まれておらず、「それは現場で対応するもの」との考え方である上、事業計画書を書く人間と実行する人間が異なる為、自力・自責的志向で事業計画書が書かれていない為、現場の人間の反感を買っているというものでした。これは正に業務コンピテンシーの一部が発揮されてはいるものの、対人コンピテンシーが殆ど発揮されていない好事例と言っていいと思います。リーダー育成に当たって留意すべき重要な点と考えるべきでしょう。

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