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靖 伊藤

AHPコンピテンシーコラム第35話

日常で気がついたコンピテンシー。 今回は、食品の箱詰めをする女性のお話です。

「箱詰め作業なんか機械的にやっているのだから、コンピテンシーなんか必要ないだろう」と考えている方もいらっしゃるかもしれません。ところが、これが人によって異なり、場合によっては会社の行く末に影響を与えている時もあるのです。

ある梱包会社のアルバイトの女性はその会社ではベテランの部類で、箱詰め作業を始める際には、まず、仕事に必要なものがちゃんと揃っているか、作業の邪魔になるものはないか、など作業の環境を確認し整えています。作業を始めると、今度は詰め込む商品を一つ一つ丁寧に確認しながら詰め込んでいますが、最初に作業環境を整えているので、作業スピードはその他の人より速いくらいです。彼女にどのように考えて箱詰め作業をしているのかを訊いたところ、「自分が以前、この箱を受け取った時、中の物が傷ついていたり、ばらばらに入っていたりして、気分が悪かった。そのことを友達に話したところ、やはり同じようなことがあるということだったので、自分がこの仕事をやることになった時、そんなことがないようにしようと思った。但し、丁寧にやりすぎて皆より遅くなるといけないので、事前に色々準備をしている。」とのことでした。

それでは、彼女が発揮しているコンピテンシーを考えてみましょう。まず、自分が不快に感じたことを友達に話し、友達も同じようなことを感じていると気付いて、そのことを自分の作業に反映したのは、「直接多くの顧客に接することで顧客ニーズの一般的な変化を敏感に感じ取り、その変化への対応を継続的に考案し自ら実行している」レベルの顧客志向力と言えます。また、そのような対応をするために時間がかかることを考慮し、前準備をきちんと整えて作業に臨んでいるのは、「情報やデータをただ分析するだけでなく、実行可能な対応策を自らで考え出している」レベルの分析思考能力と言えます。そして、自分がやる時はそんなことがないようにと思って実行しているのは、「自分の達成目標を自分で理解し、その達成に向けて努力している」レベルの達成志向力であると言えます。

このコンピテンシーを発揮しているため、彼女が梱包した箱は今までクレームが出たことがないというのはごく自然なことなのかもしれません。

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