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靖 伊藤

AHPコンピテンシーコラム第100話

前回は、グローバル化において多様性の受容が必要であったにも関わらず、私がアフリカに駐在した時に、それが満足にできなかった事をお話ししました。その後、私が何故多様性の受容が満足にできなかったかを考えてみましたが、一つには相手を上から見下していたということ、そして、その気持ちが相手の言う事を聴こうとする態度を拒絶していたのではないかと言うことが大きな理由であったと考えます。しかしながら、これは何もグローバル化を考える時にだけ必要とされる事ではありません。日本人同士であっても同じことで、先ずは相手の言う事をきちんと聴き、理解が不十分な部分についてはその点について相手に質問をして、真意を話してもらい、それを理解することが重要です。日本では昔から阿吽の呼吸が重要視されてきた為、相手の話をよく聴くという事が上手にできる人はたくさんいると思いますが、真意を汲み取るという言葉に示されるように、相手の言うことをきちんと理解できない時に、その点について、深く聴くことができる人が多いとは言えないと思います。そのような場合は、不十分な理解であっても、聴き取った内容から相手の真意を推測するという習慣が定着していると思います。これは、狭い社会においては相手の背景や歴史、性格等を把握している場合が多く、大きな誤解を生む事も少なかったと思いますが、今のように、人間関係が希薄で、相手の背景や歴史、性格等を充分に理解できていない社会においては、誤解に繋がる危険性が高いと思います。これが世界においては更に危険性が高くなります。歴史は勿論のこと、宗教や政治等、全てにおいて、背景が異なる人たちが集まる社会においては、同じ現象を全く別の観点から見ることもあり、その判断も全く異なります。それをきちんと聴きもせず、また訊きもせず、自分の考えだけで判断する事が誤解を生み、場合によっては、大きなトラブルに繋がってきたと考えるのが妥当でしょう。

これを考えると、グローバル化の訓練として行なうべき事は、まず、相手の言う事をきちんと聴き、分からない事は分かるまで訊き、理解する事を継続して行なうことです。このためにはある程度高いレベルの『対人理解力』のコンピテンシーを発揮する必要があります。尚、相手の話を聴くという事は必ずしもそれをすぐさま取り入れるということではありません。相手の話をきちんと聴いてそれを理解し、自分と考えている事の差異を明確にし、それを取り入れる事が妥当と考えた時は、その旨を相手に伝えて行動に移すことが重要ですし、それを取り入れる事が妥当ではないと考えた場合は、その理由を相手に伝え、相手がそれに対してどのような理解をしたかを確認することが必要です。日本ではこのような意見のぶつかり合いを避けようとする傾向が強いと思います。しかし、それは海外においては、将来のトラブルの火種を残してしまうという事を理解する必要があると思います。

 

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