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靖 伊藤

AHPコンピテンシーコラム第101話

いままでは私の海外での勤務経験における失敗談からグローバル人材に求められる要件の一部をお話してきましたが、グローバル人材には全体としてどのような要件が求められるのかをお話してみたいと思います。

先ず、その前に、グローバル企業とはどのような企業であるかを考えてみましょうか。私が社会に出た頃は、総合商社のように、外国に事務所を持ち、外国語、特に英語を用いて貿易を行っている企業が国際化企業と見なされていたと思います。この時の「国際化」とはどちらかと言えば、欧米を意識していたと思いますが、現在の「グローバル化」は欧米だけでなく、「Glove」という言葉が意味する地球全体を意識したものだと考えます。つまり、グローバル企業とは、事業を国内外で区別せず経営する企業であり、国家的、政治的境界にとらわれず、地球的規模で市場や資源(技術、アイディア、人材、製品)等を活用できる企業を指しているのです。そこで成果を上げる事ができる人材がグローバル人材、特にグローバルリーダーと言われる人たちで、居場所や駐在の有無にかかわりなく、本来的にグローバルな人材なのです。このような人材には語学力は必須です。この語学力にいままで2回に分けてお話したコミュニケーション能力を掛けあわせたものが必要になります。語学が如何に卓越したものであっても、相手の言う事をきちんと聴き取り、理解する力は必要になります。

次に、「異文化への適応力」を備えている事も必要です。私も商社に入った時はこれには自信がありましたが、頭で考えているのと実際に体験してみるのとでは大きな違いがありました。私の最初の出張は入社して入社3年目の6月で、行き先はヒューストンでした。その2~3日前まで日本でヒューストンからの顧客を迎えて、技術交渉に従事していた私は英語はなんとかなるという意識がありましたが、ロスアンゼルスの空港でその思いが吹き飛びました。通関でどうしても話が通じず、20分もの時間を費やしてしまったのです。日本に来る外国人は他所の国に来ているという気持ちがあり、理解してもらうために、丁寧に話してくれていましたが、アメリカではそのような配慮はない事を思い知らされましたが、この経験がその後の様々な国における私の行動のベースになったと考えています。異文化という場合に重要な事はビジネスだけの情報ではこれに適応する事は難しいということで、私は最初の3回迄の出張は全てヒューストンで、それも全てが1年間の間に行なった為、徐々に慣れていきました。しかし、4年目以降は、出張地はアメリカから中東・アフリカに移って行きました。4年目に入札のために出張したリビアでは、銀行経由送った入札書類として必要な保証状(Letter of Guarantee)に一か所記入間違いがあるということで、銀行で留め置かれている事が分かり、それを再発行する為に、2週間を要しました。日本からの連絡はすぐに来たのですが、それが各担当者のデスクで1~2日掛り、毎日銀行に行って、それがいつできるのかを尋ねることで、促すのですが、答えはいつも「ボックラ」。これはアラビア語で明日という意味ですが、次の日に行っても同じ言葉を聞かされ、それに対して腹を立てては元も子もなくなる為に、じっと我慢の日々を暮らし、やっと保証状を届けた次の日のアルジェ行きのフライトを予約し、滞在していたベンガジからトリポリに向かい、飛行機を待っていると、突然キャンセルになり、慌てて、ベンガジに戻り、ビザを延長してビザが取れた日にアルジェに向かい巻いた。そこで聞いた話では、私が予約したフライトは元繰り返し3か月前から無くなっていたとのことで、日本の便利で正確な社会システムの中で暮らしていた私にとっては非常に大きなカルチャーショックであった事が思い出されます。その後、この経験を念頭に置いて活動を行いましたが、その後も様々な経験をし、頭で考えるのと実際に体験するのとでは大違いという思いは今でも頭に残っています。

 

 

 

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