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靖 伊藤

AHPコンピテンシーコラム第106話

今回は、相手と信頼関係を形成する為にはどのようにしたら良いかについてお話ししたいと思います。

先日読んだある本に、「好かれる上司ではなく、信頼される上司になれ」というくだりがありました。信頼関係と言うと、すぐ「好かれる」事を思い浮かべてしまう人もいるかもしれませんが、「好かれる事」ばかりを意識すると本来言うべき事を言えない「物分かりの良い上司」(これは真の意味での『物分かりの良い』ではありませんが)になってしまいます。様々な事を勘案して、時には耳の痛い事も言うことで、言われた時はカチンときても、後になってその真の意味に気付き、「言ってもらってよかった」と感謝される人になる事が大事なのでしょう。だからと言って、全て正論で直言をするのが良いのではありません(私はその傾向が強く、よく家内や息子からも指摘を受けています)。ここで重要になるのが話し方です。同じ事を言っても言い方によって、相手の反応は異なります。ただ、その前に更に重要な事は相手が自分の事を理解してくれているかどうかということでしょう。その為にも、先ずは相手の言う事を傾聴する事が重要になります。傾聴することにより、相手は自分が認知されている事を感じます。その為に、最初は徹底的に相手の話を聴く事が必要です。この時に傾聴法のスキルが重要になります。先にもお話しましたが、コミュニケーションは話したり、聴いたりする言語的コミュニケーションだけではありません。表情や態度などの非言語コミュニケーションが大きな役割を果たします。話を聴いている時に腕を組む行為は、相手からは『潜在的な抵抗のポーズ』と感じられ、相手は話しにくくなります。私が研修をしている時に感じることですが、他人の話を聴くときに腕を組む癖は多くの人に見られます。全ての人が抵抗感を持っているわけではないとは思いますが、話している方からすると非常に話しにくいというのが本音です。その話をすると、「私はそんなつもりはありません」と言う反応がよく返ってきますが、問題は相手にそのような印象を与える可能性が高いということです。また、「野球の監督等で相手に対して、或いは自軍の意識を高める為に、腕を組む事は一つの方法だ」と言う反応もあります。しかし、これは腕組みを非言語コミュニケーションの一つの手段として捉え、意識的に使っているもので、相手を受け入れて話を聴くときの姿勢とは全く異なるものです。信頼を得る為の第一段階として話を聴く為には、『潜在的な抵抗のポーズ』と看做される腕組みは厳禁と考えるべきでしょう。傾聴については、前にお話しましたように、積極的傾聴があります。まずは徹底的に聴くことから始まりますが、次に心掛ける事は相手の気持ちや状態を正確に捉える事です。その為に、以前お話した質問法が重要です。話の重要なポイントはメモを取り、曖昧な部分については、拡大質問、深堀質問を使って相手から引き出し、最終的に限定質問や選択質問を使って確認することにより、相手の現状を正確に把握し、それを相手にフィードバックしていくことにより、相手はこちらの言うことに耳を傾けるようになっていきます。これで信頼の為の第一段階が押さえられたと思います。次回は次の段階についてお話したいと思います。

 

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