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靖 伊藤

AHPコンピテンシーコラム第108話

今回は、相手と信頼関係を形成する為の第2段階で必要な「戦略的思考」について、お話します。

「戦略的思考」とは目的を達成するための明確なシナリオ(実行計画)を持って考えることで、つまり、限られた経営資源(ヒト、モノ、金、時間、情報など)のなかで、最大化の成果を上げる為に、場当たり的ではなく、ゴールを明確に描き、その実現のために仮説を立てて、必要な要因(重要成功要因)を論理に沿って繋がりを明確にし、ゴールに向けて、必要な要因を含んだシナリオ(実行計画)を描いて行動する思考と言うことができます。

仕事をする際に行動が速い人には2つのタイプがあります。

一つは思いついた事をすぐ実行する人で、もう一つは、常日頃から様々な情報を収集した上で、それらを分析しておき、いざという時にそれらの結果を様々な事象に適用して筋道の立った行動を起こす人です。

前者の場合は、どちらかと言うと経験知で動いている人で、勿論、上手くいくときもありますが、往々にして様々な障害にぶつかり、上手くいかず、また一からやり直しをすることになります。

一方、後者の場合は、上手くいかない場合もありますが、その場合でも、自分が立てたシナリオを精査してやり直すことになりますので、最初まで戻る事は少なく、比較的容易に修正することができます。

勿論、双方とも第1段階をクリアした人ですので、皆さんはどちらとの間に信頼関係を形成しようとするでしょうか?結果は言うまでもないと思います。

それでは、次に「戦略的思考」に含まれる「戦略」についてお話ししたいと思います。

「戦略」とは戦争に勝つ為に立てられたもので、「長期的および全体的展望に立った活動の準備、計画、運用について明確にまとめたもの」と言う事ができます。

これには5つの主眼点と呼ばれるものがあります。                    

先ず、第一に、「短期だけでなく中長期の視点をもつこと」です。戦争では一戦一戦に勝つ事は大切で、そこで全滅してしまっては元も子もありませんが、勝ちに拘りすぎて痛手を負い、その後の戦いに大きな支障を来す事があります。最終的なゴールを見て、軽微な敗北を認めることで、後の大きな勝利を得る事を考える為にも、中長期の視点を持つ事が大切です。

第二に、「全体と個別の視点をもつこと」です。部分最適に陥らずに全体最適を考えて行動する事は必須です。しかしながら、この場合、組織のどこかに負担が掛ります。そのような「個別」の点にも心を配る事が重要です。昔の戦いには、「殿軍(しんがり)」という役割がありました。万が一、自軍が敗走を余儀なくされたとき、軍の最後で相手と戦いながら逃げ、往々にして犠牲になり、自軍を無事に逃がす役割で、正に「必死」の役割でした。しかし、この役割を引き受けた武将の一族は武将が戦死しても後、きちんと御家を残し、あがめられたのです。「Cool Head but Warm Heart」が大切なのです。

第三に、「競争優位を生むものであること」です。このとき、競合について視野を広げてしっかりと把握することから始めなければなりません。例えば、「マクドナルド」の競合と言えば「モスバーガー」と答える人が多いと思います。確かにそれは間違いのない事実です。しかし、それだけを考えて戦略を立てていると、全く違ったところから競合が表れ、果実を攫っていくことも考えられます。ターゲット顧客に商品・サービスを通して提供している価値をしっかりと見定め、同じ業界以外に同等或いはそれ以上の価値を提供する競合はいないか、彼らはどのような変化をしているのかをしっかり把握した上で、それを凌駕する事が重要になります。

第四に、「優先順位が考慮されていること」です。自分たちが大切にしているものや方策等、全てにおいて優先順位を明確に定めておくことが重要です。例えば、「安全とコストは両方とも大切なので、優先順位は付けられない」と言う言葉を聞いた事があります。しかし、うまくいっている時は「安全」が優先されますが、窮すると、「コスト」が優先されるといったブレが生じることになります。優先順位を明記し見える化することが大切です。

最後に、「チャンスとリスクを考慮していること」です。戦略と言った場合、チャンスがクローズアップされます。しかしながら、元々戦略が使われた戦争は「リスク」を如何に扱うかということから始まっています。諸策を打った際のリスクをきちんと分析し、リスクへの対応策を用意するリスクマネジメントを行うことが重要です。

これらの5つの主眼点を持った戦略を駆使することで、この人は人柄もよく、言うことも筋が通っており、先も見えて、様々な準備をしていると見られ、信頼に繋がっていくと言えるのではないでしょうか?

 

 

 

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