問題解決で大事なことは、問題を定義する際に、あるべき姿を明確に描き、そこから見た現状を具体的に記述することです。ところが、実際に問題に直面した時や、問題解決研修において、自部署の問題を扱っている時には、現状の把握(記述)が曖昧、或いは抽象的になっている事がよく見られます。「コミュニケーションが悪い」「部下のレベルが低い」「手順が決まっていない」「教育をしていない」等がそれらの典型的な例で、現場を見ると、確かにその通りですが、これでは、問題解決に繋がりません。例えば、「部下のレベルが低い」という場合、部下が複数いる場合は、全員のレベルが低いのか、それとも特定の他人を指しているのかによっても対策は異なります。また、何のレベルが低いのか、どのくらい低いのかによっても対策が異なります。
これらの現状把握の能力は『分析的思考力』のコンピテンシーの大前提となります。『分析的思考力』は、「自分の業務環境において、現状や問題などを正確に理解、整理、分析し、自分としての解決策を考案する能力」で、解決策を考案する為の前提条件として、現状や問題などを正確に理解することが必要であり、その為には正確で具体的な把握が必要になります。『分析的思考力』の最も高い「社会全体や業界全体の動き、変化を正確に分析・把握し、業界の中でも大きな影響を与えるような実行可能な独自の理論、方策、モデル等を構築している」レベルは勿論のこと、「情報やデータの整理と把握に止まり、何か新しいものを察知していない」レベルでも、具体的な現状の把握が前提です。現状(事実)を抜け洩れなく具体的に捉えて、事実と事実の間の因果関係を整理し、問題の真因を自責で捉える事だけが真の問題解決に繋がる事を念頭に置く必要があると考えます。
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