以前、ある情報番組で高級スーパーが扱われていました。このスーパーは品揃えのよさ、レジの手際の良さに加え、バイヤーの買い付け力に支えられて、躍進を続けているとのことです。
今回はそのうち、グロサリー担当のバイヤーA氏にスポットを当ててみたいと思います。
番組のスタッフがA氏のいりこの買い付けに同行したところ、A氏はいりこの買い付けを終えた後、取引先においてあったひじきを見つけ、取引先の社長にお願いして、ひじきの生産者のところへ船で向かいました。そこでは、対応してくれた全ての人たちに様々な質問をかけ、訊き出した事を全てメモにまとめていました。訊き出した内容の中には、ひじきの食べ方として、てんぷらにして食べると言うものもありました。番組のスタッフが後で生産者の方にA氏の感想を訊いたところ、「しつこい」というもので、これはその土地の方言で、「熱心」という意味だそうです。
さて、ここでこのA氏の発揮したコンピテンシーを考えてみたいと思います。先ず、一つは買い付けに行ったいりこだけでなく、そこにあったひじきにも着眼した事です。通常、出来ると言われる営業マンは、客先訪問の際に、視野を広くして、相手の話を良く聴き、直接関係がないものでもそこにあるものをよく観察をして、それが今後のビジネスに活用できないかを考察しています。ここでは、「あらゆる情報源や情報ルートを自ら開拓し、仕事で必要となる情報を誰よりも早く正確に、且つ幅広く集める能力」である情報収集力で「情報が必要な際は、自分の周りだけでなく、様々なところに積極的にコンタクトし、幅広く正確な情報を入手している」レベルの発揮が見られます。また、その際に、視野を広く持ち、直接関係ないようなものでも、ビジネスに影響を与える可能性のあるものを見逃していない点が注目されます。もう一つ注目すべきは、生産者の方から「しつこい」と言われた「質問力」です。「質問力」については今までも何度もこのコラムで取り上げましたが、対人理解力の大きな要素であると共に、情報を収集する際に、最初に相手が話していた事を深堀することで、実際にそこで行なわれている状況、このケースでは言いますと、このひじきの成分や現地で美味しく食べられている食べ方を訊き出す事が出来ています。
A氏のようなバイヤーが会社を支えている人材の育成は今後の企業の重要な課題になると考えた次第です。
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