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靖 伊藤

AHPコンピテンシーコラム第16話


日常で気がついたコンピテンシー。今回は、あるお菓子屋さんのお話しです。

私は、以前、埼玉県に住んでおり、年に2度神戸の実家に帰るたびにあるお菓子屋さんの菓子をお土産に買って帰るのが常でした。

それは正月明けにいつも通り、その店でお土産を買って帰り、その途中で東京の家内の実家に持っていった時のことでした。幾つかのお菓子を組み合わせて入れてもらうようお願いしていたところ、金額は合っていたのですが、組み合わせの内容が間違っていたのです。それまでも何度も買っていたのですが、たくさん頼んだとはいえ、間違えられたことは初めてでした。そこで、「駄目で元々」と考えつつも、その店に電話を入れて事情を話したところ、電話に出た担当者は大変恐縮して、「すぐ対処します」と言って、一旦電話を切り、10分後にまた電話をくれて、「明日、東京出張があるので自宅までお届けします」と言われました。私はそこまですることはないとは思いましたが、「これはこちらの責任ですから」という言葉に甘えることにしました。

翌日、私が仕事から帰ってくると、子供たちが「おじさんがお菓子をもってきた」と喜んでいました。家内に話を聞いたところ、昼過ぎにお店の人が来られ、代わりのお菓子を置いていったということです。

このお店は今も神戸にあり、高い人気がありますが、その時、私はこの店が昔から人気がある理由を垣間見た気がしました。これは、対応を一つ間違えば、店の評判を失墜させる危険性があったわけですが、最初に電話に出た担当者が、私が間違えられたことにどれくらいの失望感を持っているかを電話で口に出さないところまでを感じ取るレベルの対人理解力と顧客志向性を発揮して、社内にその重要性を報せ、その話を聴いた担当者が、翌日、代わりの品物を届けるという対応策を考え出して実行させるという分析思考力と柔軟性の高さを発揮したと感じしています。これらのコンピテンシーは皆で共有されて、この店の高い人気を支えていると考えられるのではないでしょうか?

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