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靖 伊藤

AHPコンピテンシーコラム第18話


日常で気がついたコンピテンシー。今回は、あるスーパーマーケットのお話です。

今まで、このコラムでは高い業績を出している方に焦点をあててお話をしてきましたので、今回はあまり良くない例について話してみたいと思います。

これは、ある総合スーパーマーケットの話です。昼間に買い物のために訪れたところ、店内はあまり活気がありません。上りのエスカレーターから下の売り場を見ていると、山積みになった商品の横を一人のお客様が通った後に品物が落ちたような音がしました。こちらから見ている限りではその人が落としたものではなさそうですが、その人は品物を元のところに戻そうとしています。ところが、レジにいた店員は、音に気付いてお客様の様子も見ているにも拘わらず、寄って来ようともせず、声もかけませんでした。

私は、その日、父の日のプレゼントのパジャマを買うためにその店を訪れたのですが、商品の場所を聞くために店員を探しましたが、なかなか見つからず、やっと見つけた二人でなにやら話をしていました。暫く待ちましたが、おしゃべりに夢中でこちらに全く気がつかない様子なので、思い切って、「パジャマはどこにありますか?」と声をかけたところ、遠くを指差し、「あそこです」とだけ言って、また、同僚の店員の方を向き直りました。私が指差された方向に行こうとしていた後ろで聞こえたのが「ごめんね」という言葉です。多分、話が途中になったことを詫びたのでしょう。結局、教えてもらったところには、目的の商品はなく、私は何も買わずに帰ってしまいました。

この話で私が話したいのは、これらの店員の顧客志向力と対人理解力のことです。

総合スーパーでお客さんと一番接しているのは、売り場の店員です。それが正社員であろうがパートタイマーであろうが、お客様にとっては関係なく、対応が悪ければ、そのスーパーの評判は悪くなり、売上は落ちていきます。このスーパーの前者の店員は、自分の持ち場を離れられないという事情はあったかも知れませんが、「ありがとうございます」と一声かけることでお客様がどんな気持ちになるかいうことを考えるレベルの対人理解力を発揮する必要があったでしょう。また、後者の方は論外です。お客さんが品物を買うことで売上が上がり、それで給与が払われると言うことをしっかり認識し、お客様から聞かれるのを待つのではなく、しつこくならない範囲で、お客様の様子をしっかり観察し、そのお客様が何を欲しているかを感じ取り、何か訊かれた時は、それを売上まで繋げるようにすることが必要なのではないのでしょうか?

後日談になりますが、そのスーパーマーケットはそれから数ヵ月後に閉店になったのでした。

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