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靖 伊藤

AHPコンピテンシーコラム第34話

日常で気がついたコンピテンシー。 今回はあるラーメン屋さんのお話です。

 このラーメン屋さんは10数年位前に開店したのですが、味が評判で流行っています。しかし、この店が流行るのはただ美味しいからだけではないのです。実は、この店は駅から神社までの途中にあり、トイレを一般の人にも開放しているのです。店のご主人は開店する際、店の回りに神社があり、駅からそこまで15分かかるのですが、神社にはトイレがないことなど店舗の周辺の情報を色々調べた上で、神社から駅への途上で神社から5分の距離のところに店を構えることにしたそうです。そして、店の表に「トイレ使えます」という看板を出し、初詣など人出の多い時に、自由にトイレを使って貰えるようにしたそうです。勿論、トイレを使っても「ラーメンを食べて行け」などと野暮なことは言いません。トイレも店の中を通らずにいけるようにしています。

そうしているうちに、最初の頃はトイレだけを使い食べずに帰っていた人も、何ヶ月か後にわざわざ「あの時トイレを貸して貰ったから」と食べに来てくれるようになり、その時ラーメンが美味しかったのでそれからはよく来てくれるようになるといった具合で流行ってきたということです。

 さて、それではこのご主人の発揮したコンピテンシーを考えてみましょう。

まず、開店の際に回りを調べて回ったのは、「情報が必要な際は、自分の周りだけでなく、様々なところに積極的にコンタクトし、幅広く正確な情報を入手している」というレベルの情報収集力の発揮であり、その結果、神社に行った人が神社を出た頃にトイレに行きたくなるのでそれに対応してトイレを開放したことは、「情報やデータをただ分析するだけでなく、実行可能な対応策を自らで考え出している」レベルの分析的思考力の表れです。そして、店の表に「トイレ使えます」という看板を出し、ラーメンを食べることを強要せず、後にお客を呼び戻したのは、「こちらから直接的に何かを要求したり、態度で示したりしなくても、相手の方から自主的にこちらの考えどおりに動くようなレベルで影響を与えている」レベルの対人影響力であり、トイレも店の中を通らずにいけるようにしたのは、「直接多くの顧客に接することで顧客ニーズの一般的な変化を敏感に感じ取り、その変化への対応を継続的に考案し自ら実行している」レベルの顧客志向性向の現れであると言えるでしょう。

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