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靖 伊藤

AHPコンピテンシーコラム第6話


今回は対人影響力についてお話します。

対人影響力は、「社内外の関係者に対して、あらゆる説明の方法やツールを駆使しながら、こちらの考えている通りに相手が納得し、動いてもらうように影響を与えていく能力」です。

対人影響力のレベルは、次のようになります。

レベル1

こちらの考えや要求を相手に伝えて説得する時にすぐに諦めたり、相手の意見に同調したりしてしまう。

レベル2

こちらの考えや要求を相手に伝える時は、根本的な理由を正確に分かりやすく伝えて、相手を説得している。

レベル3

何か相手を説得する時は、事前に最も効果的な方法を考え、理論武装、説明資料など綿密な準備をした上で説得し、相手が聞き入れない場合でも聞き入れるまで諦めずに説得している。

レベル4

理論武装、説明資料などを準備するだけでなく、相手の人間的な特性を敏感に見抜き、その特性に合わせた説得方法を事前に綿密に準備をした上で、様々な手管を用いて、相手が聞き入れるまで諦めずに説得を続けている。

レベル5

こちらから直接的に何かを要求したり、態度で示したりしなくても、相手の方から自発的にこちらが考えているように動くようなレベルで影響を与えている。

対人影響力は、交渉やプレゼンテーション、報告などに繋がるものです。これらの行為は行うだけでは意味がなく、行った行為がどのような結果に繋がるかということを意識し、その結果にたどり着くために、充分な準備をすると共に、様々な手段を持つことも重要な要素となります。

以前、テレビの番組で、「販売の達人」というタイトルの番組がありました。その中で見たマネキンさんの例を取り上げてみましょう。

マネキンさんというのは、スーパーマーケット等に派遣されて店頭販売をする人です。ここでは、餃子を売るベテラン女性と新米女性を取り上げています。売場に着き、お客様が来ると、暫くは声をかけずに様子を見ていていましたが、興味を示したのを見ると声をかけていきました。声のかけ方も、主婦には「夏バテにききますよ」とか、お父さんには「お酒のおつまみにどうですか」とか多種多様です。一方の新米のマネキンさんは、お客様が売り場に近づくと、すぐ声をかけてしまい逃げられてしまいました。また、声のかけ方もいつも「如何ですか?」と同じです。一方、ベテランのマネキンさんはある程度時間が経つと、店内で野菜を買ってきて水餃子を作り始めました。餃子の別の食べ方を提案しているのです。

ここで、このベテランのマネキンさんを対人影響力のコンピテンシーの視点で見てみましょう。まず、お客様へのアプローチです。相手が興味を示したことを確認してからのお客さまに対する話し掛け方で、「お酒のおつまみ」とか「夏バテ」という言葉を出すことで、具体的な事例を出すと共に、相手によって内容や言い方を変えています。また、水餃子を実際に作って食べてもらうという行為は、口だけで「水餃子もおいしいですよ」というのではなく、物的証拠を示して相手にそれを体感させています・

これらの行動と思考がベテランのマネキンさんは時間を待たずして完売、一方、新米のマネキンさんは売れ残ってしまうという結果に繋がってしまったのです。

次回は対人理解力についてお話しします。

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