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靖 伊藤

AHPコンピテンシーコラム第99話

最近は少し鎮静化しましたが、「グローバル化」がキーワードとなり、大企業のみならず、中堅・中小企業でも「グローバル化」に向けた取り組みを思考したり、開始したりしているところが激増しています。

私は高校生の頃から世界に興味があり、その為、大学で国際経済学を学び、総合商社に就職し、幸いにして西アフリカに駐在するという機会に恵まれました。私の駐在したコートジボワールの最大経済都市アビジャンは最近、日本大使館に反乱軍の襲撃にあったことで、有名になりましたが、元々は西アフリカにおけるフランスの植民地経営の拠点となった都市で、私が駐在した1984年現在では、インフラはかなり整備された状態でしたが、まだ、ファックスが日本から送れない等、想像していた状態を超えた環境であった事を覚えています。私は1978年に大学を卒業して、総合商社に入社し、初めての海外出張は1980年6月にアメリカのヒューストンでした。会社生活も3年目を迎え、実際に英語を使って仕事をする機会も増え、出張の前日まで、大阪で海外顧客を交えたクレーム処理にあたっていましたが、初めて足を踏み入れたロスアンゼルスの税関でなかなか意思疎通が図れず、苦労をしました。その6か月後の1980年12月と1981年2月にはそれぞれ約1か月ずつヒューストンで駐在員の方の指導を受けながら、顧客との交渉にあたっており、その時は自分も一人前の国際人と思い上がっていましたが、今考えてみると、とんでもない思い違いをしていたと赤面の至りです。その後、1984年にアビジャンに駐在するまでに、北アフリカのリビア、アルジェリア、モロッコ、中東のサウジアラビア、北イエメン(現在のイエメン)、エジプト、西アフリカのザイール、ナイジェリア、南アジアのパキスタンなどを短期出張ベースで、飛び回りましたが、その時も本当の意味でのグローバル化は出来ていなかったと思います。アビジャンに駐在した時、事務所には秘書、運転手、テレッキスト等の現地社員がいましたが、彼らとのコミュニケーションも上辺のもので、真の相互理解に取り組むようになったのは、だいぶ経っての事であったように思います。

ここで「グローバル化」とは何かについて考えてみる必要があると思います。時々、お客様で「グローバル化」を進めなければいけないというお話をお聞きしますが、「グローバル化」とは何かという事をお訊きすると、それについて明確な認識を持っておられない事が大企業も含めて、よく、見られます。その結果、「グローバル化」の取り組みイコール英会話教育になっているところも多いのではないのでしょうか?話が戻りますが、私が総合商社で納入した機器のトラブルに起因したクレーム処理にあたった際、メーカーの方が会議に参加されていました。私もそれほど英語が流暢ではありませんが、その方の英語力もカタコトのレベルでした。しかしながら、分からない事を曖昧にせず、通訳に頼ることなく、カタコトの自分の英語で質問し、そして良く聴き、一所懸命説明された結果、海外から来られたお客様の担当者もその結果に満足され、クレームが処理できた事がありました。ここでキーとなったのは、「相手を理解する」と言う事で、そのベースに「多様性を理解する」という事があったのではないかと思います。例えば、相手が何かを言った際に、理解が曖昧であっても「相手は多分こう考えているのだろう」と勝手に自分で解釈していて、後になってこの解釈の違いがトラブルの原因になることがあります。このベースにあるのが、「普通ならこう考える」とか、「日本人ならこう考える」という固定観念です。ところが、海外に住んで実感したのは、「世界の人たちが日本人と同じようには考えない」ということです。「そんなことは当たり前だろう」と言われるかもしれませんが、実際にその場面に遭遇すると、そう考えられず、相手の言う事を否定してかかっていたのです。これによって、現地社員との間でも色々なトラブルが発生しました。その時は自分が悪いのではなく、相手が悪いと考えていました。つまり、多様性の理解ができていなかったのです。

この続きは次回、お話ししたいと思います。

 

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